top of page

石のおかげで温泉ができる?



・温泉はどうして湧き上がる?

地上に降り注いだ雨や雪などが長い時間をかけて地表から地下深くまで染み込み、マグマや高温の岩石、地球内部の温かさによって温められます。

高温の水は低温の水よりも軽い (密度が低い) ため、地下で温められた水には上昇しようとする力が働き、割れ目や亀裂があるとそこから地上に湧き出します。これが温泉です。


・温泉はどうやって探す?

日本には数多くの温泉が存在しますが、どこでも掘ればすぐに温泉が出てくるわけではなく、「良好な温泉が得られる地下構造」というものが存在します。また、地下深くに存在する温泉は当然目で見ることができません。そのため、温泉を作る際は掘り進める前に入念な地下構造の調査・解析が必要です。


地下構造を調べる方法の一つに、比抵抗探査というものがあります。比抵抗とは簡単に言うと電気の通りにくさのことであり、比抵抗が大きいほど電気を通しにくく、小さいほど電気を通しやすくなります。比抵抗は地表から地下へ電流や電磁波を流し、その応答を地表で測定することで得られます。


一般的に岩石 (石) そのものはほとんど電気を通さず、水は電気を通すため、比抵抗探査によって得られた比抵抗は岩石の間に含まれている水分量を反映します。

例えば、粒子が非常に細かく、水分を多く含む泥岩は電気をよく通すため、比抵抗は小さくなります。一方で、粒子が大きく、水分の少ない火成岩は電気をあまり通さず、比抵抗は大きくなります。実際、比抵抗値は泥岩が1~100[Ωm]なのに対し、火成岩は100~100000[Ωm]であり大きく異なるため、比抵抗探査によって地下にどんな岩石が存在しているのかを把握することができるのです。


・どうして岩石の分布を知りたいの?

では、なぜ温泉を作りたいのに地下の岩石分布を把握しているのか?というと、実は先ほどの記述した「良好な温泉が得られる地下構造」に岩石が密接に関わっているからです。


一般に、温泉などの地熱資源が存在するためには熱源と水と貯留構造の3つが必要であると言われています。

地表から染み込んだ水が熱源で温められて高温の地下水が発生しても、それを貯留して閉じ込める存在がなければ高温の地下水を維持することができません。特に上で蓋をする存在がなければ、高温の地下水は地表に拡散したり、地上からの新たな雨水などによって冷やされたりしてしまいます。そのような熱水の地表への拡散や新たな地下水による冷却を防ぐのがキャップロックです。


キャップロックは泥岩のように粒子が細かい岩石によって構成されます。前述のように、泥岩は電気を通しやすい一方で、非常に緻密な構造であるために水を通しにくいという性質があり、これが熱水の上に覆い被さるように存在することで温められた地下水を維持・貯留することができるのです。

また、熱水が溜まる場所 (地下貯留層) 自体は熱水の溜まりやすさ・取り出しやすさが求められるため、火成岩のようなある程度隙間の大きい岩石で構成されます。


いわば地下貯留槽があつあつのお湯が入った鍋であり、キャップロックはそのフタのような存在であると言えます。地下に存在するこれらの岩石は、温泉の形成には欠かせないのです。


参考文献:

土質工学会(1981). 『土と基礎の物理探査』. 東京, 土質工学会.

高倉伸一(2014). 「電磁探査から推定される広域的な地熱系の構造」『物理探査』67(3), 195-203.

島裕雅(1995). 「電気・電磁気学的探査におけるインバージョン」『地学雑誌』104(7), 952-971.


東北大学流体科学研究所自然構造デザイン研究分野 / Waku2 as life (https://www.desfelab.com/)

Comments


bottom of page