"温泉"といったら湯船に使って温まる、そんなイメージがあるのではないでしょうか?
でも実は、温泉は "必ずしも温かいわけではない" ということ、みなさんはご存知でしたか?
今回は温泉の種類と定義について解説していきます。
【温泉の種類】
温泉はその作られるときのメカニズムの違いによって、大きく3つに分類されます。
①火山性温泉
日本には火山が多く存在し、火山活動にともなうマグマが地下数km~数10kmのところに溜まって非常に高温のマグマ溜まりを形成しています。雨や雪など地上に降り注いだ水の一部が地表から染み込んで地下水となり、その地下水がマグマ溜まりの熱によって温められて断層や亀裂などの割れ目から自噴したり、人が穴を掘ることで湧き出したり汲みあげたりした温泉のことを「火山性温泉」といいます。
②非火山性温泉 (深層地下水型温泉)
地球は中心部が非常に高温であるため、火山のない地域でも地下深くなるほど温度は高くなり、一般に100m深くなると約3度上昇します。また、高温の岩石が地下にあることもあり、これらによって火山とは関係なく温められた地下水を「深層地下水型温泉」といいます。
③非火山性温泉 (化石海水型温泉)
はるか昔は海だった場所で地殻変動などが起こり、地中に閉じ込められてしまった当時の海水を化石海水といいます。この化石海水が、前述の火山のように火山や高温の岩石といった高温の熱源がない地域で、かつ比較的地中の浅いところに存在する場合、それほど水温は高くなりません。このように比較的低温で太古の海水を主な成分とする温泉を「化石海水型温泉」といい、現在の海水が混ざっている温泉も存在します。
【温泉の定義】
温泉法によると温泉は、地中から湧き出す水やガスであり、
①温泉源から採取する際の温度が25度以上であること
②決められた物質のうち、どれか1種類を決められた量以上含んでいること(表1参照)
の "どちらか一方" を満たすものと定義されています。
(引用:村松容一(2011). 日本の温泉成分の特徴と起源. 化学と教育. 59, 8, 398-401)
そのため、化石海水型温泉のように低温(たとえば25度未満)であっても、塩分を豊富に含んでいれば温泉と呼ぶことができるのです。また、必ずしも液体でなくてもよいので、地中から噴き出す高温の水蒸気に地下水をかけてお湯を提供している温泉もあります。
一方で、火山性温泉はマグマに含まれる成分を吸収するため、比較的泉質が豊かであるという特徴があります。
【まとめ】
冷たい温泉が存在するのは、その温泉の形成のされ方や温泉法による温泉の定義が関わっていることがわかりました。
みなさんも温泉に行くときは、その温泉がどのようにできて、どちらの温泉と呼ばれる条件を満たしているのか、ぜひ調べてみてください。
参考文献:
日本温泉協会(2015). 温泉のメカニズム. https://www.spa.or.jp/onsen/492/, 2024/03/24.
村松容一(2011). 日本の温泉成分の特徴と起源. 化学と教育. 59, 8, 398-401.
神奈川温泉地学研究所. II−2 火山性と非火山性温泉. https://www.onken.odawara.kanagawa.jp/modules/study/index.php/content0013.html, 2024/03/24
東北大学流体科学研究所自然構造デザイン研究分野|Waku2 as life
東北大学流体科学研究所 流動創成研究部門 鈴木研究室 HP:https://www.desfelab.com/
Comments